中央教育審議会答申の抜粋

「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」

第1章 一人一人の能力・適正に応じた教育の在り方
(1) 一人一人の能力・適正に応じた教育の必要性と基本的な考え方

( [ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむ )
我々は、第一次答申において、豊かな成熟社会の実現を図る社会的要請や、国際化・情報化などの社会の急速な変化といった展望を踏まえ、[ゆとり]の中で子どもたちに [生きる力]をはぐくむことの重要性を訴えたところである。
また、[生きる力]は、自ら学び、自ら考える力など、個人が主体的・自律的に行動するための基本となる資質や能力をその大切な柱とするものであり、[生きる力]をはぐくんでいくためにも、個性尊重の考え方を一層押し進めていかなければならない旨、指摘したところである。
子どもたちは、[ゆとり]の中で、学校・家庭・地域社会それぞれの場において、様々な生活体験や自然体験、さらには社会体験やボランティア体験などの豊かな体験を積み重ね、様々な人々と交流していく。そして、子どもたちは、そうした実際の体験や人々との交わりを糧として、試行錯誤を繰り返しながら、個性の萌芽とも言うべき興味関心を触発され、生活や社会、自然の在り方を学んだり、人間としての在り方や生き方をじっくりと内省する。
こうした過程を経て、子どもたちは、机上で学んだ知識を生きたものとし、自ら学び、自ら考える力などの[生きる力]を身に付け、豊かな個性をはぐくんでいくのである。
 
( 教育における「不易」を大切にする )
以上述べてきた中で、我々は、一人一人の能力・適正に応じた教育の必要性について訴えるとともに、個性尊重という基本的な理念を掲げてきた。そして、その中で、社会の変化へ的確に対応した教育を進めていくことの重要性も指摘した。
しかし、教育においては「時代の変化とともに変えていく必要があるもの」(流行)とともに、「時代を超えて価値のあるもの」(不易)があるということを忘れてはならない。
教育における「不易」の重要性については第一次答申でも指摘したところであるが、基礎・基本を確実に身に付けていくことはもとより、思いやりや正義感などの豊かな人間性を育成したり、我が国の伝統と文化を尊重する心を培っていくといったことは、いかに社会や時代が変化しようとも大切なことであるということを改めて強調しておきたい。
むしろ、個性尊重の理念というものの本来の在り方を考えた場合、他者尊重や社会との調和の理念、例えば、他者との共生や他人への思いやり、異質なものへの寛容、望ましい社会性や倫理観、正義感や公正さを重んじる心といったものがこれに相伴わなければならないのであり、教育において「不易」の価値の実現を目指していく必要性は、今後ますます大きくなっていくと言うべきであろう。
平成9年6月26日
指導要領改訂のポイント