初めての海外出張を前に、サンフランシスコ湾周辺の地図を買った。
  お茶の水の地図専門店で見つけたそれは1980円もしたが、地形が丹念に描かれていて十分気に入りました。
 出張先は有名無名含めた数多くのコンピュータ関連企業が ひしめきあう「シリコンバレー」と呼ばれるところで地図でみると 本当に北西−南東に走る2つの山脈に挟まれた谷という地形になっていました。
 と、この東側の山脈の中に、"Lick observatory"という文字が見つかりました。 有名なリック天文台である。
 とはいっても、私はこの天文台を「リック写真星図」という名前でしか知らなかったので、 日本を発つ前にインターネット・ニュースグループの、"sci.astro"サブジェクトに 「リック天文台に行きたいんだけど、誰か教えてください!」と質問を投稿しておきました。 さっそくアメリカ人から5通、イギリス人から1通の答えが返ってきました。 それによると、どうやら一般来台者も見学ができる様です。
 ということで、リック天文台訪問は現地での貴重な休日の行動、トップ項目にリストされたのです。
 
月21日、日曜日、曇り。いっしょに出張にきているK氏の運転するレンタカーに乗って出発しました。 サンノゼ(SanJose)市の市街をぬけて山道にはいると放牧の風景が広がりはじめました。 朝も早いのにロード用の自転車に乗った人たちが必死にこいでいました。 もうそろそろ着くかなというところで霧がかかってきました。 さらに走らせると霧が薄れてきて突然山の頂に巨大なドームの影が現れだしました。 天文台周辺はほとんど人影がなく、自転車で次々と登ってくるサイクリストのほうがかえって目立ちました。

前10時過ぎに建物の中にはいると、職員の方が36inch屈折のあるドームに案内してくれました。 巨大なドームの中はヒンヤリと底冷えがしました。 その中央には細長い台座、視線をあげると台座の上にはドイツ式架台、 さらに両側に目をやるとドームの内壁いっぱいに伸びた鏡筒(約18m!)が20度ほど上を向いて鎮座していました。 細長いドイツ式の架台にのっかった鏡筒はすごく不安定にみえました。

の望遠鏡を前に職員の人が、流暢に英語で(あたりまえか)20分もの間説明してくれました。 その声はドームに響いてまるで、映画のワンシーンか、英会話放送講座の中の世界(なんじゃそりゃ)でした。 この時ほど自分のヒアリングのなさを恨めしく思ったことはありませんでした。 私は説明の10%もわかりませんでしたが、この天文台の完成に尽くしたリック氏(James Lick 1796-1876)の半生、 およびこの天文台が果たした役割についてみたいでした。 1世紀以上前の望遠鏡ですが、現在も2重星の観測などに使われているそうです。 尚、CCDによる観測は行っていないそうです。

の後、ドームに隣接するビジターセンターに行きました。 そこでは、いろいろおみやげが置いてありました。ここで撮影された様々な天体の写真、ポスター、 リックのドーム群が描かれたTシャツ、トレーナー等が販売されていました。
 一旦外へ出て頂上付近の尾根伝いに歩くと、さらに大小あわせた別のドーム群が見えだしました。  リック最大口径を誇る120inch反射望遠鏡のドームの建物には入ることができましがドームの中は見学者用の窓から覗けるだけでした。

午後からは別の用事が入っていたので昼すぎにはリック天文台を後にしました。

 第1回 おわり

※[星屑]掲載時はすべて
  手書きでした。

LICK天文台のページ に行く "Halls Valley Astronomical Group Visiting Lick Observatory"


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