たかたがあるく第4回
「国立天文台 一般公開と焼きジャガの夕べ」

立天文台を訪れるのは実に5年ぶりのことだった・・・

 JR中央線・武蔵境南駅発のバスは市街地を抜け、やがてこんもりと木々が生い茂った一角の縁にたどり着く。そこの停留所で降りると、すぐに空気が変わっているのに気づく。構内から木々の香りが漂ってきているのだ。ああ、そうだ、こんな空気だったのだなと、昔のことが思い起こされる。

臭覚は記憶につながる・・」何かの本にそう書かれてあった。

年ほど前、渡部潤一先生(現・国立天文台広報普及室長)主催の太陽系内小天体を対象にしたゼミが月1回のペースで開かれたいた。国立天文台の地区の名前をとって「三鷹塾」と名付けられたこのゼミには、野望ある多くのアマチュアの研究者が集まってきた。私もそのゼミの末席を借りていてここにはだいぶ通った。ゼミの部屋は、国立天文台の広大な敷地(と思われる)のすぐ手前にあったので、奥に足を踏み入れたことはほとんどなかった。ただ最後のゼミの日、−この後、渡部先生はハワイに留学されることになる−ちょうど私も仕事の関係で熊本に帰る直前でもあった(その話は5年前の「星屑」にも書いている。)−時間がかなりあったので敷地の奥にひとりでずんずん歩いていった。天文台の奥はさらに木々がこんもりしげり、その中に点々となにやらいわくありげな建物がたっていたのを覚えている。

 その後・・・三鷹塾は終わっても、渡部先生とつきあいのあった研究者は、ことあるごとここを訪れていた。内地留学する人もいた。知るひとぞ知るアマチュア天文研究者の梁山泊となって今日に至っている。

てさて、話をもとに戻して、1996年10月19日(土)晴れ。この日は年に1回の国立天文台三鷹地区の一般公開日でした。バスに乗り込むころから、なにかワクワクして乗り込む、親子連れ、カップルの顔が多いなと感じていましたが、やはり予想どおり国立天文台前停留所で大半の乗客が降りてみんな構内に入っていきました。私は、当初から「たかたがあるく」に載せるつもりでしたから、事前の綿密な調査など当然・・・するはずがなく、とりあえずコンパクトカメラを右手に、借り物のデジタルカメラを左手に、そして背中のディバッグにはスケッチ用具を忍び込ませ5年ぶりに天文台の門をくぐったのでありました。

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