Vol-4 ぼったくりかえす
アテネ (ギリシャ) 1987年
リカベトス丘登り
アテネの”リカベトスの丘”は、アテネの街を一望できる観光スポットだ。アテネの街を一望できることではパルテノン神殿の”アクロポリスの丘”が有名だが、なにしろリカベトスの丘はそのパルテノン神殿も含めて一望できるのだから、勝負は歴然。
1987年2月に初めてアテネを訪れた(というよりも、初めて海外の街を訪れた)私と友人Aと友人Bは、若さにまかせてリカベトスの丘を徒歩で登りきった。どの程度時間がかかったかは覚えていないが、2月の気温で汗をかいたし、アテネ訪問歴ありの人にこの話をすると、「歩いて登ったぁ?」とビックリされることから、かなりの健脚が必要な高さだったことは間違いない。それでも眼下に広がる街並みを眺めるだけで疲れは一気に吹っ飛んでしまう。特に丘の頂上にある展望台からの眺めは絶品で、しばし神話の世界に思いを巡らせた。
しかし、人間の世界、特に世界の観光スポットには様々な人間がたむろしているのである。
今思えばお手ごろ価格か?!
時間を忘れて展望台から下界を眺めていると、背後から「ヘイ!」という言葉。「ヘイ!」と言われれば本能的に振り返る(当時は)お年頃の私たち。「ヘイ!」に続いて耳にしたのは「パチリ!」という音。目の前には中年の男性。パチリという音はポラロイドカメラのシャッター音で、男性はべろっと排出されたポラロイド写真を差し出すと、「△○ドラクマ(当時のギリシャ通貨)!」とのたまう。当時の対日本円レートは忘れてしまったが、100円少々の値段だったと思う。
あぁ、これが勝手に撮っておいて金を請求するぼったくり野郎だな・・・とすぐにわかったので、当然断ると、自分はプロのカメラマンでプロに撮ってもらったのだから君たちはお金を支払わなくてはならない!と主張する。
それならばポーズをとる時間ぐらいは与えろよ〜と思ったが、そんな甘いことを言えば向こうの思うツボなので、何を言うのか、お金を払うのはあなたの方だ!と切り返す。
寸胴が条件なのだ
意外な切り返しに少々たじろいだ野郎だが、当然、それはなぜか?と訊ねてきたので、私たちはプロのモデルだから、あなたはモデル料を支払わなくてはならないのだと諭す。
野郎は失礼にもしげしげと私たちを眺めまわすと、「プロのモデルにはみえない。」と返してくる。そんなことは知っとるわい!と思いながらも、言葉は冷静に、「ジャパニーズ・トラディショナルクローズ(←着物のつもりね)のモデルだから、あなにはわかるまい。」と論じると、ぼったくり野郎はしばしの沈黙の後、いきなりカラカラと笑いだすと、そろそろ画像が浮き出る頃合のポラロイド写真をこちらにホィと投げてよこしたのだ。
勝った。
そのポラロイド写真は友人Bがお持ち帰りになったが、貴重な戦利品だけに後生大事にするように!