釈迦と印相

放牛石仏の中には両手で、特別な形を示しています。それらを「印相」(いんぞう)といいます。仏教では、手と指の形に意味があります。三省堂出版の大辞林では、指を種々の形に折り曲げて、仏や菩薩の悟りや力を象徴的に表すものと記されています。釈迦如来の印相を紹介します。
釈迦如来の印相は、五つあります。定印(じょういん)・施無畏印(せむいいん)・与願印(よがんいん)・転法輪印(てんぽうりんいん)・降魔印(ごうまいん)の五つです。これらを総称して、釈迦の五印と呼びます。

最初の二つの印の意味を説明します。定印は釈迦が悟りを開いたときの様子を表します。仏像の場合は座像になるようです。二本指で輪をつくるわけではありません。この定印は、阿弥陀如来の上品上生の印に似ています。

施無畏印・与願印は別々の印になりますが、仏像では二つが組み合わされて使用されます。施無畏印は説法を聞く人々の緊張を和らげる意味があります。そして与願印は、仏の深い慈悲を表しています。この二つの印は、阿弥陀如来の下品上生の印に似ています。放牛石仏の指が欠けていれば、判断に迷います。

定印 施無畏印・与願印

次の二つは、転法輪印降魔印です。転法輪印は、釈迦が説法したときの姿を表しています。ここで示す二つの印は、放牛石仏では見られません。転法輪印などは、石に彫ったとすれば大変だったと思います。

降魔印は、釈迦が修行しているときにじゃまをしようとした悪魔を追い払った姿を表しています。この形は仏像の場合、座像になっているようです。

転法輪印 降魔印