放牛石仏の特徴・1

第001体 〜 第030体A

第001体から第030体Aまでの石仏の大まかな特徴をまとめました。しかし、私自身の研究不足のために仏像の区別がはっきりしない場合もあります。また印相にしても、石仏のために不明な点もあります。その理由は、釈迦如来の「釈迦の五印」と阿弥陀如来の「九品来迎印」が似通っていたり、指が欠損しているためです。

全体の高さは、蓮華座の底辺から光背の頂上までの長さです。仏体の高さは、つま先から頭の上までの長さです。

● ● 享保7年(1722) ● ●

第001体  熊本市出仲間8丁目。熊本市立田迎小学校正門前のY字形交叉点。
享保7年(1722)5月建立・地蔵菩薩の座像・両手に宝珠・全体の高さ75cm・仏体の高さ47cm
(文字) 「放牛」 「他力」 「熊本」 台石の文字は次の通り。
「募化戮力 彫刻座像地蔵尊 立于道側 蓋普 結大縁 同生浄邦  享保七年壬寅五月 放牛」

第002体  熊本市近見3丁目。国道3号線墓地から入り、今村さん方の家の前。104体台石も。
享保7年(1722)9月建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ69cm・仏体の高さ36cm
(文字) 「一心に念佛」 「他力二体目」 「熊本古大工町放牛」 台石の文字は省略

 

● ● 享保8年(1723) ● ●

第003体  熊本市迎町白川左岸。長六橋と泰平橋の間の堤防脇の公園。27体もある。
享保8年(1723)建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さは不明で推定100cm・仏体の高さ46cm
(文字) 「三体目」 蓮華座の弁に「放牛」

(道歌) 過去よりも 未来に通る 一と休み 雨降らば降れ 風吹かば吹け

第004体  未発見
未発見であるが、享保8年(1723)建立のはずである。

第005体  熊本市春日4丁目2。北岡神社裏から花岡山登山道へ200m。
享保8年(1723)5月建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ103cm・仏体の高さ60cm
(道歌) 過去よりも 未来に通る 一と休み 雨降らば降れ 風吹かば吹け

第006体  熊本市池田1丁目2。往生院境内墓地。右奥の地蔵群。100体もある。
享保8年(1723)7月建立・地蔵菩薩の立像・両手で合掌・全体の高さ92cm・仏体の高さ51cm・
(文字) 「放牛」 「享保八卯年七月」 「他力」 「願主放牛」 「古大工町」
(道歌) 一度も 佛をたのむ行者とて まことの法は 叶いこそすれ

第007体  熊本市坪井4丁目4。浄行寺交叉点近くの宗心寺本堂の中にある。
享保8年(1723)9月建立・地蔵菩薩の立像・左手宝珠、右手に錫杖・全体の高さ91cm・仏体の高さ48cm・
(文字) 「七体目」 「放牛」 「熊本古大工町」 「享保八年九月」 
(道歌) なむあみだ なむあみだぶつの 外は皆 思うも言うも 迷いなりけり

第008体A 熊本市島崎6丁目1。慈恵病院から左折し、ポレエルゴルフガーデンの東側墓地。
享保8年(1723)10月建立・地蔵菩薩の立像・両手に香炉・全体の高さ74cm・仏体の高さ40cm・
(文字) 「陀力」 「念佛」 「妙法」 「願主熊本」 「放牛」 「享保八卯十月日」

第008体B 熊本市島崎5丁目2。島崎交番先で右折して橋を渡り右折。福田さん方前の墓地。
享保8年(1723)12月建立・阿弥陀如来の立像・下品上生の印相・全体の高さ93cm・仏体の高さ50cm・
(文字) 「六阿弥陀」 「他力」 「くわんしゅくまもと」 「古大工町放牛」 「享保八卯十二月日」 蓮華座に「放牛」

 

● ● 享保9年(1724) ● ●

第009体  熊本市春日3丁目4。セブンイレブン春日店の交叉点から細い路地に入る。
享保9年(1724)2月建立・阿弥陀如来の立像・下品上生の印相・全体の高さ86cm・仏体の高さ50cm・
(文字) 「六阿弥陀」 「陀力」 「願主放牛」 「九体目」 「三年忌」 「享保九辰二月」

第010体  戦災で消滅。

第011体  未発見
未発見であるが、享保9年(1724)建立のはずである。

第012体  未発見
未発見であるが、享保9年(1724)建立のはずである。

第013体  熊本市春日3丁目4。セブンイレブン春日店の交叉点から細い路地に入る。
享保9年(1724)5月28日建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ76cm・仏体の高さ42cm・
(文字) 「他力」 「願主 放牛」 「甲五月二十八日 十三年忌」

第014体  熊本市室園2丁目2。国道3号線沿い。ベスト電器とミスタードーナツの間。
享保9年(1724)建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ86cm・仏体の高さ50cm
(文字) 「 体目」 「放牛」 文献には「南無阿弥陀仏」があったとか。
(道歌) 放牛は 湯屋の如く 世上の人は 入りての如し

第015体  熊本市京町1丁目2。新堀橋近くの愛染院山門前。
享保9年(1724)建立・阿弥陀如来の立像・下品上生の印相・全体の高さ93cm・仏体の高さ53cm
(文字) 「他力」 「願主放牛」 「十五体目」

第016体  熊本市細工町4丁目。坪井川沿いの宗禅寺境内。台石のみ。
享保9年(1724)7月建立・台石のみ
(文字) 「石佛十六」 「放牛」 「七月」 「体願成就」 「享保九甲辰年」

第017体  熊本市河内町大将陣。左折すれば金峰山少年自然の家へ行くT字形交叉点。
享保9年(1724)8月建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ72cm・仏体の高42さcm
(文字) 「石佛十七体也」 「願主放牛」 「八月」 「他力」 「十七日」

第018体  熊本市山室1丁目。イベントホール・TKUプラザ反対側の辰昇寺境内。
享保9年(1724)建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ89cm・仏体の高さ53cm
(文字) 「他力」 「石仏」 「十八体」 「熊本願主放牛」

第019体  戦災で破損(水前寺4丁目7。渡瀬地蔵堂の床下)
享保9年(1724)建立・戦災で破損・
銀もちも 穴のはたまでちがえども それからさきは おなじ土くれ

第020体  熊本市紺屋町3丁目。下河原公園の地蔵堂。右奥の幡を持つ立像。
享保9年(1724)建立・地蔵菩薩の立像・全体の高さ152cm・仏体の高さ93cm・幡を持つ石仏はこれだけ
(文字) 「他力 願主放牛」 「二十体」 幡に「南無阿弥陀佛」
(道歌) 世をすくう心は われもあるものを かりのすがたは さもあればあれ

 

● ● 享保10年(1725) ● ●

第021体  熊本市松尾町上松尾。大石建築作業場前。松尾東小学校近く昭和橋手前100m。
享保10年(1725)正月18日建立・聖観音菩薩の立像・左手は印相、右手に錫杖・全体の高さ116cm・仏体の高さ72cm・
(文字) 「熊本願主」 「多力放牛」 「二十一体目」 「享保十乙巳正月十八日」
(道歌) 何に思う 何をか嘆く 世の中は ただ転ねの 花の上の露

第022体  熊本市池田1丁目10。熊本少年鑑別所北側の池田八幡宮入り口にある。
享保10年(1725)建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ101cm・仏体の高さ59cm
(文字) 「熊本願主 放牛」 「他力」 「二十二体目」
(道歌) 盗人も とられるわれも もろともに 同じ蓮の うてななるらむ

第023体  熊本市楠野町。ウエスト味の町熊本店から東へ入る。永田さん方の屋敷の隅。
享保10年(1725)7月吉日建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ66cm・仏体の高さ44cm・
(文字) 「他力」 「享保十乙巳年」 「七月吉日」 台石に「楠原村」

第024体  熊本市飽田町権藤。飽田南小学校近くの権藤神社鳥居前。
享保10年(1725)建立・阿弥陀如来の立像・下品上生の印相・全体の高さ107cm・仏体の高さ66cm
(文字) 「二十四体」 「多力」 「つの」 台石に「放牛」
(道歌) 人問わば 山を川とも答うべし 心と問わば 如何に答えん

第025体  熊本市横手4丁目7。本四方池(よもち)公民館前にある。
享保10年(1725)8月25日建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ100cm・仏体の高さ61cm・
(文字) 「他力」 「二十五体目」 「放牛」 「所繁昌芯地満足」 「享保十乙巳天八月」
(道歌) たてまつる 蓮の上の露ばかり われを守れと 三世の佛に

第026体  熊本市黒髪7丁目。県道(旧国道)沿いの長薫寺山門の左隅。堂の中。
(文字) 「願主放牛」 「他力 二十六体目」 
享保10年(1725)建立・十一面観音菩薩の立像・両手に香炉・全体の高さ93cm・仏体の高さ55cm

第027体  熊本市迎町白川左岸。長六橋と泰平橋の間の堤防脇の公園。3体もある。
享保10年(1725)建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ100cm・仏体の高さ60cm
(文字) 「他力」 「二十七体目」 「願主 放牛」

第028体  未発見
未発見であるが、享保10年(1725)建立のはずである。

第029体  熊本市大江1丁目10。子飼橋通り交叉点にある善行寺境内。
享保10年(1725)建立・地蔵菩薩の立像・両手に宝珠・全体の高さ100cm・仏体の高さ57cm
(文字) 「二十九体目」 「他力」 「願主 放牛」
(道歌) 世の中は 風に木の葉の 裏表 どうなりこうなり どうなりこうなり
(道歌) いう人も いわれる我も 諸共に 同じ蓮の うてななるらん 

第030体A 熊本市下硯川町。西里駅前から旧道へ右折して坂道の左。
享保10年(1725)建立・釈迦如来の座像・印相は阿弥陀の上品中生・釈迦と阿弥陀の混合仏・全体の高さ90cm・仏体の高さ60cm
(文字) 「釈迦仏 妙法 念仏」 「他力三十体目」 「願主 放牛」

放牛地蔵に関する資料は、郷土史サークル・「放牛石佛の会」の皆様方のご好意により、貴重な研究資料を使用させていただきました。お礼申し上げます。