放牛石仏・第100体

(場所)念願の100体目です。池田1丁目の往生院にあります。墓地の右奥にあります。全高186cmですから、すぐにわかります。ステージのような所に、他の地蔵とともに建っています。ここには左下に6体目もあります。平成11年9月3日に第一回の訪問。第100体を撮影するときは、午後がいいようです。なぜなら右手に大きなイチョウがあり、日光をさえぎっています。

 

          

 

(石仏)地蔵菩薩の座像ですが、一番大きな地蔵です。左手に宝珠、右手に錫杖を持っています。これだけ大きい石仏は、めったにないでしょう。見上げてしまうその石仏は、周囲を威圧してしまう感じです。念願の100体を建立した放牛上人は、どんな気持ちでこの石仏をみたのでしょうか。この石仏は、享保17年(1732)の建立です。

(測定)平成13年9月9日に再度訪問して長さを測りましたが、大きすぎて正確な数字ではありません。全体の高さは150cmです。別の石で造られた蓮華座は36cmありますので、合計186cmということになります。座像の両ひざの横幅は80cm、光背の幅は80cmです。台石も大きなもので、横52cm・縦48cm・高さ63cmもあります。

(文字)光背正面右に「天下和順」と「百体他力放牛」の文字があり、左に「日月清明」となっています。台石正面に「願主」 「講中」 「放牛」が刻まれています。

(備考)私の気づきとして、鼻が欠けていることと左手の宝珠の上がとがっていることです。右手に持つ錫杖が一本の杖として体から離れて彫られていることも驚きです。石の彫刻としては、緻密な造りかもしれません。なお仏体と蓮華座は別々に彫って乗せたものと思います。一つの石で造った物ではありません。この石仏は墓地の別の場所にありましたが、平成4年2月に移されました。

浄土三部経の中の無量寿経より

 

天下和順   日月清明   風雨以時   災歯s起

国豊民安   兵才無用   崇徳興仁   務修礼譲

 

石仏第100体に刻まれた文字は、浄土三部経の中の無量寿経の一部になります。天下和順(てんげわじゅん)とは、天下泰平の世の中を意味します。日月清明(にちげつしょうみょう)とは、季節ごとの天候が安定していて、異変が起きないことを意味します。

風や雨は季節にあったものでよい、そうすれば天災も人災も起こることはない。国は豊かに栄え、人々は安心して暮らすことができるだろう。兵や軍隊は必要がないし、戦争はあってはならない。それよりも徳を高め、愛情を持って人に接するべきである。できるだけ礼儀をつくして謙虚な態度で過ごしなさい。

このような解釈でいいのでしょうか。放牛上人の石仏建立をして願ったことは、この経典の中に表れているようです。第100体は、放牛上人の大願成就の石仏です。この石仏は2月か3月に完成したと思われます。しかし皮肉なことに、放牛上人が日月清明を期待したにもかかわらず、5月の大洪水を始めとして天災が続きます。