私の教具論「誰でも作れる教具と、楽しくわかる授業」

1 教材・教具のもつ意味

教具の定義や意味には、いろんな説があるようです。私の場合、幅広くとらえていますし、教材と教具の区別もしていません。その理由は、理論にこだわるよりも実践を優先したいためです。まず、生徒のために行動を起こさなければなりません。それでも一応、私なりの意味付けをしてみました。

  (1) 指導要領の目標と、1単元・1時間の小目標を確実に理解させるもの
  (2) 興味・関心をよびおこすもの

@ 教科書だけによる単調な授業を防ぎ、楽しい授業にしたいものです。
A 学習意欲を高め、自主的な学習態度を育成したいと思います。

  (3) 生徒の理解を助けるもの

@ 抽象的な思考ができない生徒に対し、具対物を示して視覚に訴えます。
A 問題解決のために、具対物で操作させます。
B 数量、図形などに関する基礎的な概念を育てるための、補助資料とします。

  (4) 授業を効率的・印象的におこなうもの

@ 指導の時間を短縮できます。つまり無駄がないということになります。
A 広用紙等を利用すれば、板書を省略することができます。つまり、何度もくりかえして指導できます。
B 三年間の指導の中で利用すれば、ひとつひとつは印象深く記憶に残ります。

 教材・教具作成の手順

  (1) 基本的な考え方

@ できるだけ長期の使用に耐えることが必要です。頑丈な物にします。
A 保存の方法を考えて、大きさを決めます。広い物と大きい物はいけません。
B 教師用教具と、生徒用教具を区別して考えるべきです。
C あまり複雑なものは作らないことにします。複雑なものほど時間がかかるし、壊れやすくなります。

  (2) 作成の手引き

@ 教科書の挿し絵(平年図形、空間図形、実験、観察)を具体化します。
A 教科書の問題、例題を解説用に具体化します。
B 雑誌等の資料を参考にして作成します。
C 問題を解くための教具は、組合わせて利用することも考えられます。
------たとえば ( 学習シート + 教材・教具 ) あるいは ( 学習シート + 広用紙 )

  (3) 教具の使用方法

@ 作成するのに一日かかっても、授業では10分程度にします。長時間使用すると興味を無くしたり、単元の目標をおさえにくくなります。
A 一つの教具で、単元全部の目標をおさえることは不可能です。欲張ってもいけませんし、うぬぼれてもいけません。

  (4) 製作のための材料と道具

@ 身の回りの物で充分です。道具は、家庭に備わっています。材料は、市販されています。以前に比べ種類も豊富になりました。

(道具) はさみ ・のり ・定規 ・ボンド ・カッターナイフ ・カッター下敷き ・ペンチ  ・ニッパー・はとめ ・はとめパンチ ・千枚通し ・きり ・マジック ・円切りカッター ・やすり ・ドリル ・コンパス

(材料) 厚紙( 白表紙・画用紙・色画用紙・ケント紙 ) ・プラスチック板 ・プラスチック管 ・ベニヤ板 ・竹ひご ・金属棒 ・発泡スチロール ・OHPシート ・工作用細木( ○、□、△、L、凸、凹等 ) ・マグネット ・マグネットシート ・両面テープ付きマグネット ・アルミ材 ・ゴムひも ・輪ゴム ・針金 ・洗濯物ハンガー

(購入) スーパー ・文房具店 ・プラモデル店 ・デパート ・日曜大工店 ・ホームセンター ・手芸店

 

3 資料の収集と整理

    気に入った教具等の紹介記事も、そのままにしておくとやがてなくなります。必要になったときさがしても、見つかりません。そこで、自分の感覚に合う整理の方法を決めておくと便利です。やがて廃棄する月刊誌ならば、切り貼りするのが一番です。私は、次のような方法で資料を収集し、整理しました。
  (1) 資料の集め方

@ 図書類は破るわけにはいかないので、コピーしてファイルに綴じます。
A 月刊誌・週刊誌・研究会の冊子等は、捨てる前に分解し、気に入った記事だけを切り取って残します。B 研究会の資料プリントは、気に入ったプリントだけ残しておきます。
C 教材カタログの古い物をもらい、切り貼りします。
D 玩具や趣味のカタログ、そして新聞の切り抜き等があります。

  (2) 資料整理の方法

@ 雑誌は規格がまちまちで、紙のサイズはA判が多く、整理しにくいのです。
A 台紙(B5)を作り、パンチ穴をあけておきます。
B 台紙に糊付けをして、切り取った資料を貼ります。
C 台紙は表だけを利用します。こうすれば捜すのも早くなります。

  (3) 資料保存の方法

@ 台紙に貼ったものを分類し、ファイルにとじます。
A 最初は領域ごとにとじておきます。学年を越えて利用するものが多いからです。何年か継続すると、
資料が多くなりファイルが厚くなってきます。このとき学年ごとに分類します。三領域×三学年で9から12冊程度になると思います。
B さらに、学年ごとのファイルが厚くなったら、単元別とします。最初から何冊もファイルを準備する必要はありません。
C 資料として残すだけなら、大学ノートに直接貼っても便利です。
D 領域に入らない項目は、別冊にしておくといいでしょう。
例 〜 課題学習・指導案集・数学関連の教育問題・観点別評価

 教具の保管

    思いつきで作った教具は、その場限りで捨てる人もいます。それは、次回の指導までに三年間あると思うからです。効果があったと判断した教具は、捨ててはいけません。保管すべきだと思います。保管の有無は、作品の出来具合にもよるでしょう。また大きさにも影響されるようです。
  (1) 自作教具の良さ

@ 生徒が親しみを持ってくれます。
A 大切に扱うのですが、無くなったり壊れても、気になりません。

  (2) 教材備品の扱いにくい点

@ 指導者の考えと同じでない場合もあります。
A 保管に気を遣うことがあります。

  (3) 保管する方法

@ 厚紙の場合
・ 大封筒に入れて、表に内容を書いておきます。
・ 学習プリントとのセットならば、そのプリントを貼ります。
・ 大封筒は、デパートの手提げ袋に分類して保管します。
A プラスチックで作った教具は、紙の封筒では破れます。そこでポリ袋などを利用します。
B 立体模型等は、分解して保管します。1m位の長い教具もあります。これらは、箱に入れます。

5 自作教具の問題点

    教具を自作するとき、避けて通れない問題があります。道具は揃うのですが、材料を購入しなければなりません。また、授業が終わった後、どこに保存しようかということになります。
  (1) 製作費用 〜 自分の作品と考えるならば、自分のお金で製作します。
  (2) 保存場所 〜 学校の倉庫・廊下のロッカー・自宅の物置
  (3) 保存期間 〜 少なくとも三年間は保存します。私の場合十年以上使っています。

 

    1999.4.13